『クラインの壺』 岡嶋二人 ( BinB store )

2013年2月16日土曜日

 自著を初めて e-book としてラインナップして頂いたのはボイジャー社の理想出版でした。その割りにここで現在のボイジャーのサービスを取り上げていない。やっと、取り上げます。

 先月岡嶋二人のうちの「ひとり」である井上夢人さんが岡嶋二人全作品を電子書籍化する予定があることを公表されているのを目にしていたのですが、BinB store のサイトを見ると発売されていてトップページでプッシュされていました。一番最初に目に入ったのは『岡嶋二人コンプリートボックス』、全作品がパッケージになっていて値段が \9,999 !

 とても手が出んぞ、と思ってよくよく見ると当然ながら1冊づつも購入できます。恐らく私が最初に手にとって読んだであろう、そして今は手放してしまってもう本棚にはない『焦茶色のパステル』も気になったのですが、先に最後の作品となった『クラインの壺』を買って読むことにしました。バレンタインデーだから『チョコレートゲーム』なんて洒落も思いついたのですが、これが一番面白そうに思えたので。


 ところで BinB というサービスなのですが、ブラウザで動きます。つまり、スマートフォンやタブレットでもリーダーアプリをインストールするのではなく、ブラウザがあればプラグインアプリが動くような形式です。
ブラウザの設定に多少の注意点があるようですが、見た限りほとんどデフォルトの設定で使えるようでした。ただ、リーダーアプリをインストールする手間と、ブラウザの設定を見直す手間、どちらがより敷居が高いだろうか。例えば、以前 tapestry というエッセイなどを e-book 化するサービスを紹介しましたが、あれだと読もうとすると iPhone で(最近 Android アプリも出たという案内メールを受け取りました)アプリをインストールするよう促されます。その時点でもう読むのを諦めてしまうひとも多いかもしれません。ブラウザ上で意識せずにリーダーアプリが立ち上がって動けばその方が良いかもしれない。でも、万一ブラウザの設定がずれていてそこで見れなかったら、利用者としては良いイメージを持たないかもしれないリスクがあるように思います。
さて、PC で本を購入します。

 ちなみに BinB store のアカウントは以前からの Voyager ID が利用者側での作業無しにに引き継がれています。パスワードを忘れていたので再発行しましたが、特に面倒なくログインできました。
Voyager ID に紐つけて登録していた paypal のアカウントも引き継がれていて、決済はスムーズでした。

読み始めたのですが、前回 BookLive! でも指摘した点が私に立ちはだかりました。

 私は地下鉄の中など 3G 回線が届かない場所で iPhone4 で読む、という時間が一番長いのです。BinB は既に開いている状態ならば電波の入らない状態でも読み続けることが可能です。ただ、開いていないとそもそもブラウザで binb-store.com に接続できないため、読み始めることが出来ません。

 また、再度読むまでに時間が開くとログインが継続されないようで、再度ログインを求められます。1Password のようなアプリを使えばログインの煩雑さは回避できるでしょうが、それなら最初からアプリにすれば良い。

 読んでいる際の操作性としては、改ページも軽快だし、途中で e-book を閉じた時のブックマークも確実にスムーズに読んでいた場所を覚えてくれていて、その点 Kindle で感じるようなストレスはありません。数あるリーダーのラインナップのひとつとしてはあって良い。今回 e-book 化された岡嶋二人作品は紀伊国屋BookWEB でも、Kindle store でも買うことが出来るようになっています。でも、今回 BinB store で「購入」した『クラインの壺』は Kinoppy や Kindle ではそのまま読めない訳です。その前提だと BinB で読むという選択肢は狭められるように思っています。現に、書き出しからかなり惹き込まれる展開の『クラインの壺』、なかなか読み進められないのです。