『名ごりの夢 蘭医桂川家に生れて』 今泉みね (平凡社東洋文庫/BookLive! )

2013年2月11日月曜日


 東洋文庫は以前にも文献として読みたい時に e-book で買ったことがありました。楽天だったでしょうか、 eBook Japan が出しているものを ebi.book reader で PC で読みました。会津に旅行に行く前に Isabella Bird の『日本奥地紀行』、高梨健吉氏による訳本。聖武天皇の治世の記述を読むために『続日本紀』。

 先日、BookLive! が「平凡社の東洋文庫の597冊を配信、絶版書籍も入っている」という記事が出ているのを読み興味を持ちました。改めて記事にするということは、文章をテキストデータ化して製本したということか?

 以前私が eBookJapan で購入した東洋文庫の e-book は紙のページをスキャンして読めるようにしたものでした。読む、という行為においてはこれで不都合はないのですが、画像ではなく文字がテキストとして扱われ、マイニングの対象と成り得るような形で改めてリリースされたのであれば……あの膨大な東洋文庫のライブラリとしての価値は更に飛躍することになります。

 早速 BookLive! に PC からアクセスし1冊購入することにしました。以前購入したものと同じ物を買って比較しても良いかと思っていましたが、画面で見て値段がリアルの本と変わらない値段設定になっていたので、気が変わりました。一冊千円台から三千円台で並んでおり、e-book としては高い印象。東洋文庫のコンテンツとしての価値に自信と誇りがあっての値付けということになりましょうか。

そんななか選んだのは今泉みねの『名ごりの夢』。今泉みねは幕末の幕府奥医師桂川甫周の娘で、娘の頃の桂川家の出来事などを後に息子夫婦が聞き書きしたのが『名ごりの夢』。司馬遼太郎さんの『街道をゆく』の『神田界隈』の中で、かつての神田明神下の遊芸のまちとしての雰囲気を追う中で開成所の教授でった柳河春三に触れています。柳河春三は酒席においては滑稽な踊りを披露したりして愉快なひとだったようなのですが、司馬さんは春三の面影を追うにおいてはこの『名ごりの夢』の記述に多くを負っています。それを知識としてだけ覚えていて、実際にはまだ『名ごりの夢』自体は読んでいませんでした。

 毎度の事ながら PC で購入して iPhone4 の方で BookLive! のアプリを立ち上げると、本棚の方ですぐ同期が始まります。
同期が終わって e-book を開くと、なんだ、以前と変わらない画像でした。PC の購入ページに「本シリーズに使用している原版データは時間が経過している作品が多いため、一部不鮮明な箇所がある可能性がございます」と但し書きがあったのは画像だったからだ…… 以前から出ているものと同じではなく、リマスターはかけているようです。

BookLive! アプリの操作性について、再び


 気を取り直して読み始めた『名ごりの夢』は成島柳北や柳河春三、若き日の福沢諭吉といった人物たちの普段の姿を伝える資料としても、去りゆく江戸の風物を口語で伝える資料としても優れたものです。何よりも穏やかな口語体で書かれていることが詩情をかきたてるものとなっているとおもいます。

 ところで当初読んでいる際には、BookLive! の iPhone アプリの「画面をタップすれば次のページに行く」という機能を忘れてしまっていて、左右にフリックすることでページをめくろうとしていたもので、しばしばめくったつもりが元のページに戻っている、という現象にしばしば行き当たりました。慣れればページめくりにストレスは無くなりましたが、なぜこんなにめくりにくいのか。改ページの操作性としてはどれが一番良いのかという根本的な問題についてまだゆらぎがあるというのは面白いとも言えます。でも、3分の2以上フリックで運んだはずのページが戻るというのはやはりどうかなぁ。

 あと、東洋文庫のような画像の原版データの場合、iPhone アプリが開いていたページを一定期間経つとクリアされてしまうようで、冒頭に示した表紙が表示されます。従って、栞を多用することとしました。画面の真ん中辺りをタップするとメニューが表示され、下に栞の形をしたアイコンが表示されます。
栞のアイコンをタップすると、栞に関するサブメニューが表示されます。「しおりをつける」というメニューをタップすると、その日時で栞が作成されます。私はこれに「編集」ボタンから入って章名をつけるなどして使うこととしました。
最後に、iPhone で e-book を読もうとするのは得てして 3G 回線や LTE の届かない場所であったりします。私の場合は地下鉄の中などが多いですね。電波の届かない場所でリーダーアプリを立ち上げた場合、当然ながら素早く立ち上がってくれる方が良いのですが、BookLive! のアプリはいちいちオンライン接続をしに行きます。これがとてもうざったい。モバイルフォンアプリとして、考え方を間違えておられるように感じます。ネットに接続しに行くのは、もっとあとの操作で良いように思うのです。

 例えば紀伊国屋書店の Kinoppy が非常に操作性が良いのと比べてしまうので、感想の中に苦情が多いようですが敢えて列記しまいた。以前取り上げた時から変わっていないというか、寧ろいろいろ気になる箇所が多くなったように思いましたので。