『アリンコ球団』 吉森みき男 ( JComiViewer+ )

2013年4月22日月曜日

 漫画を読まなくなって結構経ちます。二十代になって仕事をするようになってもスピリッツ辺りは読んでいたでしょうか。高橋留美子さんの人魚シリーズ、吉田戦車さんの『伝染るんです。』、士郎正宗さんの『アップルシード』など最後の方まで本棚に残っていた作品もいつのまにか手放してしまいました。もちろん新たに買うこともほとんどありません。先日ひさしぶりに『究極超人あ~る』の特別読み切りが出た時には思わずスピリッツを買ってしまいましたが。

 絶版漫画を共有できるサービス「Jコミ」はもしかしたら立ち上がる時にリリース記事など読んでいたのかもしれないのですが、最近初めてラインナップを見ました。廃版となった漫画やライトノベルを読めるサービスです。無料である代わりに画面下に広告が出ます。新沢基栄さんの『3年奇面組』『ハイスクール奇面組』が上がっていたのが意外でした。ほとんど全巻持っていた作品。もちろん今は持っていませんが、選んだのはもっと古い作品でした。
 吉森みき男さんがどれくらい知られている漫画家さんなのかよく分かっていないのですが、改めて調べると私が博多に住んでいた1977年から1980年にかけては雑誌に『アリンコ球団』が連載されていた時期に重なるようで、非常に強い印象があります。『巨人の星』や『侍ジャイアンツ』といった作品に比べればずっと地味なのでもしかしたら私の同学年前後以外では知られていないかもしれません。でも、大変印象に残るシーンがあって、それを再度見てみたくなって全3巻をダウンロードしました。

 アプリもダウンロードも無料です。広告が下部に出ることは先に述べた通り。データは軽量版と標準版がありますが、こだわりはないので軽量版を選択しました。通信量を慮ってwi-fi がある状態でダウンロードをしましたが、iPhone からの操作だけで読み始めるところまでできるようになっています。
 操作に小難しい機能はなく、左右フリックでページ送りをします。栞の機能は無し。開いた本から本棚に戻るにはどうすれば良いのか最初分からなかったのですが、どうも画面をダブルタップで戻るらしいと使っているうちに分かってきました。シンプルですが、これだけの手順で懐かしい漫画を読めるならば特に不満は無いという印象です。

思い出のシーン

『アリンコ球団』は野球漫画ですが、『ドカベン』のように飛び抜けた才能を持ったやつ、スーパーヒーローは出て来ません。野球がやりたくて集まった小学生たち。バットは短く持つ。一塁に出たら送りバント。コツコツ、でもしっかり練習して少しづつ戦績を積み重ねて強くなっていく。

 これがなんで面白かったのだろう。多分、手が届く感じだったのだろうと思います。短くバットを持てば俺もあんなふうに打てそうだ、というように。送りバントありきの高校野球は果たして正しいのか、と今ならば言えますが、基本に忠実な野球観というのが手の届きそうな感覚を添えて我々の世代に提供されたのだと思いますが、この漫画も一役買っています。

 探していたシーンをみつけました。押されている試合で、回がかわってすぐにデッドボールでランナーが一塁に出る。その瞬間に新たに就任した若い監督が「ここだ! このチャンスを逃すな!」と選手に檄を飛ばすシーン。子供の時に読んだページはもっと劇的な感じがあったけど、今は素朴な表現に思えるのはこの間いろいろな作品でいろいろな表現方法を見てしまい、すれてしまったのでしょうか。