「デイリーポータルZ」はウェブマガジンとして時にバカバカしいことを真面目につきつめて取材記事にしていてつい読んでしまう「雑誌」として接しています。私などは毎度「デイリーポータルZ」のサイトを見に行くということはせず、Twitter のタイムラインであったり、はてなブックマークのホットエントリーに上がってくる個別の記事を読む事が多いです。記事は編集を経ているので読んでいてひっかかるようなことはないしちょっと気になる記事のタイトルを見かけたら読みに行きます。
普段から記事の質は保たれているのでひとつのテーマで編集し直したら本として面白いものがいくつも出来そうだと以前から思っていました。しかしデイリーポータルZは記事提供やコラボレーション、有料会員サービスなどの営業手段を持っているようなのですが単行本化は意外と少ないように思われます。そんななか気になった単行本化作品をみつけました。大塚幸代さんの『初恋と座間のヒマワリ』 、昨年10月刊行されています。
大塚さんの書いたものについて言及する前に毎度のこと ebook にたどり着くまでのことを書くのですが。
調べてみて Yahoo! ブックストアで購入できるらしいことが分かりました。今まで使ったことがない ebook サービスですが iPad と iPhone5 にもアプリをインストール、本を買おうとします。この購入に時間がかかってしまったので本筋に入る前にそのことを書きます。
iPad の Safari で Yahoo! ブックストアの本のページを見ます。右側にあるオレンジの「同意の上購入」ボタンをクリックしてみまましょう。
決済手段なのですが3種類ありました。というか3種類しかない。
Yahoo!ウォレットと WebMoney は現在使っていません。Yahoo! のアカウントはあったりするわけですがオークションとかは利用していないしウォレットには入金しないと使えないんですよね……多分。T-Point は使っていますが丁度セルビアの豪雨災害に寄付としてたいした額ではないながら使ってしまっていてほぼ空っぽになっていました。
そこで他のポイントからTポイントへの移行してから購入することに。移行するまで2週間ほどかかりました。
ウェブからも読めるようですが iPad のアプリで開きます。左上の「購入済み」から本へ。
……やっと読める。
このように愚痴るのはやっとたどり着いた『初恋と座間のヒマワリ』が面白かったからで「早う読ませてくれよ」、というところでしょうか。
おおまかに「随筆」でくくれる分野の作品が私は好物で、もちろん読み出したら止まらないようなフィクション作品もこの世にあることは理解しながらも同じ作家でも随筆から入ってしまうようなことがよくあります。そういえば丁度長男の夏休みの宿題「10冊本を読む」の候補を図書館で選んで来たのですが気持ちよいくらいフィクションは1本も入っていませんでした。
大塚さんの本も前書きに
とあるのでその選考基準が私の随筆好き癖の琴線に触れたのでしょうか。
「個人的なことを書いてる」というこの編集基準で選ばれた文章たちはある種の鬱屈が匂い立ちます。テーマというか「お題」というか、各章のタイトルはそれぞれ面白そうなネタ設定を期待させるものです。でも読んでみると影を感じるのです。自分へのコンプレックス。十代の頃の自分の回想。過去の仕事での挫折。
それが読んでいて嫌じゃないところが大塚さんのチカラではないだろうかと。もう少し出してしまうと押し付けがましくなって読むのが嫌になってしまうし隠すとお気楽なネタ記事として読み飛ばしてしまうものになる。それが絶妙なバランスで読むのに心地好いところで書かれています。
私が好きな章はかつて住んだ町を訪れてみるはなしをパーソナル・ヒストリーを交えて書き綴った『初めて一人暮らしした家に行ってみる。』と本のタイトルになっている『初恋と座間のヒマワリ』。初恋のひとが住んでいた座間を「ひまわりがいっぱい咲いているところに行ってみたい」というテーマ設定で訪れます。その思い出の苦さ。帰りに新宿でベルクに寄ってビールを飲んで行く。ベルクは新宿の地下改札を出てすぐにあるカフェ・バーでおいしいランチやコーヒ、グラスビールを求めて人が絶えない場所です。一方で喧噪のなかでひとりで居心地好く過ごさせてくれる希有な店でもあります。
ベルクに休息を求めるひとは仲間だと思いつつ読んでいました。
翌年の四月に大塚幸代さんの訃報に接し呆然とすることになりました。
訃報です: デイリーポータルZ 制作日記(DPQ)
レビューについて、ツィッターで書いたことをお知らせしたところリプライをいただいたのが唯一の彼女との接点でした。短いリプライだったので多少なりともお役に立ったのか、ご迷惑だったのか測りかねていたのですが、なにぶんいつも一方的に書いているものでリアクションをいただけないこともよくありやはり一方的に嬉しく感じたことを覚えています。
ここに謹んでお悔やみを申し上げるものです。
普段から記事の質は保たれているのでひとつのテーマで編集し直したら本として面白いものがいくつも出来そうだと以前から思っていました。しかしデイリーポータルZは記事提供やコラボレーション、有料会員サービスなどの営業手段を持っているようなのですが単行本化は意外と少ないように思われます。そんななか気になった単行本化作品をみつけました。大塚幸代さんの『初恋と座間のヒマワリ』 、昨年10月刊行されています。
大塚さんの書いたものについて言及する前に毎度のこと ebook にたどり着くまでのことを書くのですが。
調べてみて Yahoo! ブックストアで購入できるらしいことが分かりました。今まで使ったことがない ebook サービスですが iPad と iPhone5 にもアプリをインストール、本を買おうとします。この購入に時間がかかってしまったので本筋に入る前にそのことを書きます。
iPad の Safari で Yahoo! ブックストアの本のページを見ます。右側にあるオレンジの「同意の上購入」ボタンをクリックしてみまましょう。
- Yahoo!ウォレット
- T-Point
- WebMoney
Yahoo!ウォレットと WebMoney は現在使っていません。Yahoo! のアカウントはあったりするわけですがオークションとかは利用していないしウォレットには入金しないと使えないんですよね……多分。T-Point は使っていますが丁度セルビアの豪雨災害に寄付としてたいした額ではないながら使ってしまっていてほぼ空っぽになっていました。
そこで他のポイントからTポイントへの移行してから購入することに。移行するまで2週間ほどかかりました。
ウェブからも読めるようですが iPad のアプリで開きます。左上の「購入済み」から本へ。
……やっと読める。
心地よい随筆として
せっかく ebook というかたちを取るのだからいかに「販売」という関門をくぐる必要があるとはいえもう少し簡単に本に到達するようにできないものかと思います。複数のブックストアサービスからたどり着けるようになっている、とか、ひとつのブックストアサービスで購入したのならば他のサービスでも読めるようにする、とか。既に部分的には試みられているかもしれませんが、そういう考え方が当たり前となった方がむしろ ebook は売れるのではないかと思うのですが。このように愚痴るのはやっとたどり着いた『初恋と座間のヒマワリ』が面白かったからで「早う読ませてくれよ」、というところでしょうか。
おおまかに「随筆」でくくれる分野の作品が私は好物で、もちろん読み出したら止まらないようなフィクション作品もこの世にあることは理解しながらも同じ作家でも随筆から入ってしまうようなことがよくあります。そういえば丁度長男の夏休みの宿題「10冊本を読む」の候補を図書館で選んで来たのですが気持ちよいくらいフィクションは1本も入っていませんでした。
大塚さんの本も前書きに
「あれ、大塚さん、何か極めて個人的な、変なこと書いてない?」 と言われたものを、わざと選び、改稿した
とあるのでその選考基準が私の随筆好き癖の琴線に触れたのでしょうか。
「個人的なことを書いてる」というこの編集基準で選ばれた文章たちはある種の鬱屈が匂い立ちます。テーマというか「お題」というか、各章のタイトルはそれぞれ面白そうなネタ設定を期待させるものです。でも読んでみると影を感じるのです。自分へのコンプレックス。十代の頃の自分の回想。過去の仕事での挫折。
それが読んでいて嫌じゃないところが大塚さんのチカラではないだろうかと。もう少し出してしまうと押し付けがましくなって読むのが嫌になってしまうし隠すとお気楽なネタ記事として読み飛ばしてしまうものになる。それが絶妙なバランスで読むのに心地好いところで書かれています。
私が好きな章はかつて住んだ町を訪れてみるはなしをパーソナル・ヒストリーを交えて書き綴った『初めて一人暮らしした家に行ってみる。』と本のタイトルになっている『初恋と座間のヒマワリ』。初恋のひとが住んでいた座間を「ひまわりがいっぱい咲いているところに行ってみたい」というテーマ設定で訪れます。その思い出の苦さ。帰りに新宿でベルクに寄ってビールを飲んで行く。ベルクは新宿の地下改札を出てすぐにあるカフェ・バーでおいしいランチやコーヒ、グラスビールを求めて人が絶えない場所です。一方で喧噪のなかでひとりで居心地好く過ごさせてくれる希有な店でもあります。
ベルクに休息を求めるひとは仲間だと思いつつ読んでいました。
付記
このレビューを書いたのが2014年7月のことでした。翌年の四月に大塚幸代さんの訃報に接し呆然とすることになりました。
訃報です: デイリーポータルZ 制作日記(DPQ)
レビューについて、ツィッターで書いたことをお知らせしたところリプライをいただいたのが唯一の彼女との接点でした。短いリプライだったので多少なりともお役に立ったのか、ご迷惑だったのか測りかねていたのですが、なにぶんいつも一方的に書いているものでリアクションをいただけないこともよくありやはり一方的に嬉しく感じたことを覚えています。
ここに謹んでお悔やみを申し上げるものです。
@Mukunokiy 本当にありがとうございます。
— 大塚幸代 (@yukiyoo) July 21, 2014
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