『日本ワインガイド』 鹿取みゆき/株式会社虹有社 ( iPhone アプリ )

2012年10月27日土曜日

 Amazon が Kindle Fire HD と Kindle PaperWhite の日本発売をウェブトップページ上で高らかに宣言し、Apple が iPad mini を発表した華やかな週になりました。新しいガジェットで読んだ本についてレビューを書いてみたら楽しげな気がしてきますが、ここは元から用意していた題材について深めたいとおもいます。


 e-book のひとつの是非発展させたい用途のうち、教科書や参考資料などの教材があります。今週はベネッセコーポレーションが通信教育教材のひとつにタブレットを導入する旨のプレスリリースもありました。e-book の分野としては忙しい週ですね。

導入事例:ベネッセ、進研ゼミ教材にタブレットを導入 - ITmedia PC USER 導入事例:ベネッセ、進研ゼミ教材にタブレットを導入 - ITmedia PC USER


 実際の本には線を引いたり書き込んだりという手軽さがありますが、最新の教材を届ける、ということを考えるとでは e-book にも可能性が広がっています。例えば歴史や科学といった分野においては新しい発見で内容が書き換えられることもあり得ます。指導要領の変更というような大人の事情にも対応できそうですね。

 内容が更新されることが前提となる……というものとして、図鑑やガイドブックという分野もあります。今日の題材はガイドブックです。

 虹有社という出版社さんが出されている『日本ワインガイド』を e-book アプリとしてリリースされる旨の案内を目敏く見つけ、早速発売日に購入しました。ちなみに本の方は未読のまま、興味が先に立ってアプリを触っています。

 これまでも例えば、植物図鑑アプリを購入したこともあり、これも e-book のひとつのカタチと言えるだろうととらえて使っていました。ワインというと詳しくないけど酒飲み、という立場から言うと銘柄はたくさんあってどれが良いのか選ぶのが大変な風におもっています。

 広く国産ワインについて網羅されたガイドブックをイメージして読みはじめました。2年前、甲州市勝沼に家族で旅行したことがあり、その時に買って帰ったワインについて思い出し、あれはこのガイドブックには載っているのだろうか……とおもいつつ、です。


 いきなり脱線して「今月のリリースワイン」というメニューを覗いてみます。ボジェレー・ヌーボーをお祭りのように迎える商業的習慣が根付いて既に久しい気がしますがお祭りは多いに越したことはなく、国内で作られる新酒ワインの解禁を待つという感覚は楽しげです。



 戻ってワイナリーを探してみました。地図から探したり、ラベルから探したり……あれ、無いみたい。

 というか、紹介されているワーナリーが45軒と結構限られているようだということに気が付きました。とりあえず45軒のリストから山梨県のワイナリーの一覧に入って確認しましたが、私が探している醸造所は入っていません。


 つまりこれは「日本ワイン」とタイトルに謳っていることに意味があるらしい。つまり、著者が「国産ワインを作っておられる」と評価した醸造所が紹介されているのだ、と分かって来ました。もっと広範囲に網羅したガイドブックと勝手に勘違いしたのです。

 ホームに戻って「日本ワインを知る」というコラムに入り、読みすすめると、その意図がよりよく分かりました。ワインというのは葡萄畑と一体のもので、収穫した葡萄でワインを醸造する……というのが通念であり定義であるのですが、日本においては輸入材料から作ったものも「ワイン」と呼ばれている。本来それはワインとは別のものなのに……という問題提起が為されているのです。そして、そのような「醸造」が罷り通ってしまう時期が続いたなかでも国際的に正しい「ワイン醸造」を続けてきた醸造家が国内にも居られるという紹介の意図から、書かれています。

「国産ワインのワイナリー」という定義に従うとまだ限られた地区の限られたワイナリーしか示されないわけですが、今後優れたワイナリーが増えてくれば、このガイドブックはアップデートされて新たなワイナリーが紹介されることになるのかもしれません。私の実家のある山口の隣、島根も果物がおいしい土地でありワイナリーが紹介されているのですが、わが郷里付近にも新たなワイナリーが生まれたりしないだろうか。できれば増えてほしいです。美味しい酒が待っていると知れば帰郷にも力が入るというものです。

 またスマートフォンに入ったガイドブックを頼りに旅に出かける、というような使われ方はもちろんあるでしょう。更に空想を膨らませればガイドブックをひとつの媒介として新たな醸造所を支援する……というようなことが起こってもいいんじゃないだろうか、などともおもいます。そういったことはソーシャルネットワークなどのウェブサービスの方が得手かもしれませんが、「本」がひとつの核になるというカタチがあっても良いかとおもうのです。

 余談ですが関西で奈良や和歌山に「国産ワイン」と認められるワイナリーが無く、大阪南部に有るというのも意外で新たな発見でした。大阪が葡萄の一大産地だった時代があったこともコラムで言及されているのですが、それだけで一冊本が書けそうに思いました。というか、読んでみたい。

 最後にアプリとしての使い勝手なのですが、コラムを読んでいる時アプリのレスポンスが悪くなる時があって、一生懸命上下にスクロールしようとしていると、iPhone4 が勝手に長押しタップされたと判断してコピーモードになってしまうことが度々ありました。これは他のアプリケーションでも起こり得る事象なのでしょうか。余計にレスポンスが悪くなり、途中で読むのを中断する、ということが何度かありました。早く機種を iPhone5 に交換すれば良い、ということなのかもしれませんが、改善の余地を感じました。



まいにち虹有社: 2012年10月23日『日本ワインガイド』のiPhoneアプリを発売します まいにち虹有社: 2012年10月23日『日本ワインガイド』のiPhoneアプリを発売します