Japan ebooks サービスのこと

2013年11月27日水曜日

 先に香川ebooks について取り上げました。




 その後、香川ebooks と同じ仕組を使った、地域密着の eBook ポータルサイトが急速に広まっていることに気がつきました。Wikipedia にも「地域特化型電子書籍ポータルサイト」という一項目が立てられています。

 ウィキペディアの情報から調べていくと、これらのポータルサイトの嚆矢が宮崎ebooks であると知りました。香川がそれに続いて、ぐらいのタイミングです。そしてこれらのポータルを束ねるものとして Japan ebooks という共同体(?)ができていて、ウェブサイトも立ち上げられています。



「電子書籍の時代だからできる、新しい地域貢献と印刷需要の創出」というスローガンが冒頭に掲げられています。私などはあとの方の「印刷需要」云々が本音だな、などと思いつつみています。まだ対応していない都道府県向けにお問い合わせ先も用意されていて、宛先が「Japan ebooks事務局 (株)宮崎南印刷内」となっており、大日本印刷や凸版のような巨大な組織や資本を持たない印刷会社が立ち上げたプロジェクトなのだと推測します。

 このポータルサービスが地域住民の生活に資するというのは頷くのですが、印刷需要をどう喚起するのかという点についてはちょっとピンと来ません。そのあたりどのようなビジネスプランを持っておられるのか、あるいはどのような成功事例があるのか、知りたいように思います。

 これを書いている 2013 年 11 月 24 日の時点でポータルが開設されているのは11府県となっています。
  1. 宮崎ebooks
  2. 香川ebooks
  3. 奈良ebooks
  4. 熊本ebooks
  5. 京都ebooks
  6. 富山ebooks
  7. 宮城ebooks
  8. 岡山ebooks
  9. 福井ebooks
  10. 秋田ebooks
  11. 静岡ebooks
ひととおり PC と iPad でこれらポータルをひととおりみて回ったのですが、気になった点がありました。PC で参照している分にはとくに問題ないのですが、iPad だと専用アプリをインストールしていないと「リンク無効」と出て開けない場合が多々あることです。しかもアプリをインストールすればいいんだ、ということが分かりにくいインターフェースになってしまっています。私でも最初つまづいたので、タブレットやスマートフォンの扱いに詳しくないひとはそこで使うのをやめてしまうのではないでしょうか。

 あとは地域によってアプリとの関係に差があります。おそらくサービス提供基盤にバージョンの差があるのではないかと推測するのですが、3グループに分かれています。

【その地域独自のアプリを無料で導入できる】
宮崎、香川、奈良、京都、宮城、岡山

【ActiBooks という無料アプリで参照可能】
富山、福井、秋田

【アプリのインストール不要でブラウザ内で eBook が読める】
静岡

 地域専用アプリも ActiBook と同じ画面インターフェースなので同じアプリケーションなのだろうとおもいます。地域専用アプリの場合、ポータルサイトに分かりやすくアプリダウンロードへのリンクが表示されるので、それに気づけば良いのだろうとおもいます。

宮城ebooks の例

 岡山ebooks の例

京都ebooks の例、リンクからアプリダウンロードへの誘導ページ

 これが富山、福井、秋田のポータルだとアプリのダウンロードを促すリンクが「はじめてご利用される方へ」という共通のデザインのリンクになっていて、かつアプリダウンロードへの誘導リンクが小さく使用説明の部分が大きいので最初見落としてしまっていました。

  地域ごとの専用アプリが良いのか、共通アプリが良いのかというのは議論があって良いところだろうとおもいます。地域の方々に使ってもらうことが主眼にあるのならば地域専用アプリの方がとっつきやすいはずです。旅行者などで、ひとつのアプリケーションで複数地区の情報を集めたいというようなニーズがあるのならば Actibook 共通でも良いかもしれません。ただ、複数パターンが入り交じっているのは今後展開していくうえではまずかったかもしれないという印象を持ちました。システム立ち上げ時期には、実際の展開スケジュールと開発スケジュールの相反からこんなことが起きてしまいがちではあるとシステムの業界にいるものとしてはおもいながらも、です。

 なお静岡のブラウザ内で読めるパターンですが、Voyager 社の BinB などでも感じたことですが、ネットにつながっている分には快適ですが、オフラインの状態で読みたい時にどうかという課題はあるかとおもいました。今後も参加都道府県が増えていくなかでどのように標準化されていくのか興味があります。
実際には前のエントリーでとりあげた下野新聞社さんの「栃本」のようなポータルが既にある県もあります。もしかしたら栃木県はポータル2つめが出来てその品揃えを競うようなことになるのかもしれません。それが顧客を奪い合うような事態でなく、その地域の生活を豊かにするような方向に向ってほしいものです。