『AiR 4 KDP (電子書籍AiR) 』 堀田純司 編集

2014年8月28日木曜日

 昨年の2月に『AiR』という「雑誌」についてここで書いたことがありました。この時は第2号を取り上げていて、iPhone アプリとしてリリースされていたものを私は読んでいます。

 先日4号を Kindle Store で購入したのですが、折しも「マガジン航[kɔː]」に発行人の堀田純司さんが寄稿されているのを改めて読み ebook としての刊行の形態の遷り変わりについて参考になったので改めて取り上げさせていただこうと思います。




 実のところ『AiRtow』を読んだ時点ではこの「雑誌」を商業誌の延長のような捉え方をしてしまったところがあり、興味を持ちながらもいったん視界から外したような扱いに私のなかではなっていました。今回改めて「単なる商業誌の ebook 化ではなく編集者による意欲的な試みなんだ」ということを認識しました。

「つくった人間」とは

「マガジン航[kɔː] への寄稿「AiRがマルチ配信をやめてKDPに絞ったわけ」で特に私が興味を持ったのは「つくった人間が売るのが一番いい」という下りでした。「つくる」というのは「執筆する」という意味ではなく「商品としての本をつくる」ということでしょう。

 世の中には自分で執筆もデザインも編集も、時には販売戦略までも自分でこなせるような才能をもった作家さんが稀におられます。ebook においては出版インフラともいうべき Kindle Direct Publishing (KDP) のようなサービスとツールが現れそういう才能にとっては自分の作品を世に問う好機がきているといえるでしょう。

 しかし私が ebook というカタチで実現したら面白かろうとおもうのはそういう才能が世に出てくるという事よりも、今までの出版の仕組みでは見いだされるのが難しかったような作家、生まれるのが難しかったような作品が我々の前に現れるような事です。堀田さんが「つくった人間が売るのが一番いい」というのは作家とチームを組んで「作家は書きたいけど従来の出版業の枠の中では場所がない」ような作品を商品として送り出したい、というようなイメージであろうと読みました。

 KDP といった手段で世に出される作品には質が充分とはいえない作品もたくさんあることは既に見えています。大半の作品がそうだ、という指摘があるほどです。ebook とウェブが実質同じものだという理解に立てば読むに値するものがごく一部だというのは頷かざるを得ないでしょう。それは呑み込んだうえでより低い初期投資で面白く質の高い作品を世に送り出すために eMagazine が場としてある、ということに意味があります。「面白い」という点についてはひとにより千差万別であることをおもえば「質が高い」ということが重要です。質とは校閲・校正のことはもちろん、デザインやパッケージ、ブランディングということも含まれます。

 登竜門的な賞や持ち込みを受ける編集者に近い役割ができる場としての eMagazine がたくさんあれば作家はそこで学ぶことも出来るのです。eMagazine を通過点に「自分でひととおりつくれる」作り手が育つ、ということもあるでしょう。

ふたつの eMagazine にみる相似

面白いことに『AiR』の方針は昨年読んだ時に全然違うものだとおもっていたフリーの eMagazine 『トルタル』に近くなっているように思えます。『トルタル』がなるべく多くの人の手に届けるためにあえて無料配布という手段を取ったのと、『AiR』がなるべく多くの人が迷わずに読み始められるように KDP 一択という手段に絞ったのと。

 また ebook、emagazine といった手段でもって売れそうな企画かどうかよりも「おもしろい企画をかたちにしよう」という『AiR』と、「俺らの方がもっとおもしろいものつくれるぜ」って思ってもらえるような場をつくろうという『トルタル』。

 書いている作家のいろは違いますし、これまでたどってきた経緯も異なります。それが同じような考えに達してきているというのは興味深い。

『AiR 4』の個々の記事については堀田さんの紹介に勝るものがないようにおもいます。あえていえば今回は「きんどるどうでしょう」管理人さんによる冒頭記事「電子書籍で食いたいなら、売る力を身につけろ」が読みたくて買ったようなところもありました。『AiR』の KDP 集約とシンクロするところがある記事で、実績をもつサイトの話しなだけに説得力があります。冒頭記事に旬な書き手をもってきている。

 加えて吉田戦車さん、岡田有花さん、岡野隆司さん、カレー沢薫さん、カラスヤサトシさんらの作品が継続して載っていることで雑誌としての色合いが出てきているのを読んでいて感じました。




AiR 4 KDP (電子書籍AiR)




AiRthree (電子書籍AiR)



AiRtwo (電子書籍AiR)



AiR (電子書籍AiR)