2014年12月22日(月)19時半から高円寺パンディットにて「第一回電子雑誌サミット」と銘打って『Air』の堀田純司さん、『トルタル』の古田靖さん、『群雛』の鷹野凌さんを登壇者に迎えてのトークセッションが行われました。司会は『マガジン航[kɔː]」の仲俣暁生さんで、日本において電子雑誌における「首脳会議」としてはこれ以上ない顔ぶれで開かれたと言えます。
私も聴講してきました。実は少し遅れてしまったために最初の方は聴けず、途中で入場して後ろでギネスを喇叭しつつ立ち見をしていたのですが、鷹野さんの『群雛』と「日本独立作家同盟」についてのプレゼンテーションがひと段落したところで前の方の席がふたつほど空き一転して最前列でお話しを聴くことが出来ました。何か普段の心がけが良かったのでしょうか。
内容については仲俣さんも含めた登壇者がそれぞれお書きになるのではないかと思います。よってここにレポートを書くのは蛇足に過ぎないのではないかという気もするのですが折角の最前列でしたので覚えている話題を幾つか書き記しておこうとおもいます。ちなみにこれといった写真は撮っておりませんでした。自分が飲んでいたギネスの瓶とパンディットの床の写真が手元にはあるのみです。
という問いがありました。これについて堀田さんから「(複数の作品が)バンドルされていてバラ売りはしない、ということだ」ということを言われました。執筆者から「バラ売りしないんですよね?」と確認されることもある、と。
これに対しウェブは個別に読めたり、取り上げたり、ブログ記事であればリンクを張ったりができます。
「電子雑誌とウェブとではどちらが良いのだろうか?」
という問いに発展します。鷹野さんはウェブ「も」良い、のではないかとと言われ古田さんはウェブ「が」良い、ということを言われました。古田さんの指摘は、EPUB はハイパーテキストを ZIP で固めたものだから実は内容には細かくリンクを指定することも可能、だけどまだそこまでできていない、「この雑誌のこの号のこの記事が良い」というような、ブログ記事のブックマークやキュレーションでは普通にできることが ebook ではまだできていない、という内容でした。
逆にウェブは個別に記事を取り上げることが容易だがどこまでがひとつなのか、という境界線が得てして曖昧でバンドルには向いていない、ということも言われました。なお紙の雑誌はバンドルされているわけですが実際に読むときにはぱらぱらとランダムに読んだりします。電子雑誌も「バンドルできてかつ個々の記事にもアクセスし易い」というところを狙うべきだというのがこの話題で見えたところでした。
アマゾンのランキングは単位期間中の売り上げ「点数」であって売り上げ「金額」ではない、ということに気づかずに群雛の値付けを進めたため、遠慮のない値段にしてしまった……という話しがありました。当日トルタルへのライバルという煽り方がしきりとされたのですがそれがひとつのオチとなっていました。
「雑誌というのは得てしてコミュニティから生まれてくる、という側面があるとおもいます。これから電子雑誌としてこのコミュニティから出たら来るんじゃないか、というのはどんな分野があると思われますか?」
という質問をさせていただいたのでした。
古田さんからは「音楽じゃないでしょうか」という話がありました。CD店などから出されている雑誌や冊子はあるが基本画像とテキストで構成されていて読みつつ即音が聴ける、というものはまだないのではないか、と。ウェブであればナタリーのようなサイトがあるわけですが、バンドルされた電子雑誌でも実現し得ます。
鷹野さんからは一時的に盛り上がるコミュニティというのが確かにある、という話しで、例として Google がリリースしているゲーム「Ingress」が挙げられました。Ingress は私もプレイしていますが GPS を利用した「陣取りゲーム」といえるゲームで、敵味方や活動地域でコミュニティが自然とできるゲームです。実際には ingress においては Google+ などでクローズされたウェブサイトであったり普通のウェブサイトで情報発信されていたりするので「ウェブの方がフィットするのかもしれないけれど」という指摘もありつつ、でした。ただこれから盛り上がるコミュニティを見つけられれば電子雑誌を打ち出してそのコミュニティには認知される……ということが起こせるかもしれません。
この質問からの流れではなかったかとおもいますが堀田さんから Air の初期の巻で桜坂洋さんによる『デビルマン』の再小説化に触れて「デビルマンだったら何でも買う、という方々が一定数おられるのでデビルマンを続けていたらもっと部数は行ってるはず」という話しもありました。デビルマンは当然小説化の承認などが必要になるものですが、これもコミュニティという視点では示唆的でした。
例えば The Beatles は、例えば One Direction のようにオーディションで全英から選ばれた若者ではなく、近所に住んでいた若者がバンドを組んで結果的にあそこまで大きくなりました。
例えば硯友社は東京大学予備門の文学同好会の尾崎紅葉や山田美妙が手作りした回覧雑誌からスタートしました。平塚らいてうの青鞜社しかり。
最初からレベルの高いところで認められる、というカタチも勿論あるのですが身近にライバルがいて切磋琢磨して結果として大きな存在になる、ということが雑誌というものでも実現し得るんじゃないか。「当方ボーカル、各楽器できるひと求む」というバンドメンバー募集のように「自分はココしかできないけどまず始めるぜ」という身軽さでやっていいんだ、というアジテートは古田さんや仲俣さんから繰り返し出されたところでした。
「編集者として直感で決める」というのが古田さんと堀田さん。
一方で「表紙のイラストも内容の記事も全て入稿順」と鷹野さんが言われるのでその編集不介入さの徹底ぶりから場内爆笑となりました。古田さんがツっこむツっこむ……
しかしルールをきちんと決めて運用する、というのが結果的に鷹野さんの個性が出ているといえるのではないかという話しになりました。現在は入稿開始日時も決まっていて、早ければ15分で締め切られてしまうこともあるのだということでした。
映像に関しては実写はともかく、アニメーションは作成に手間と時間がかかる。しかしネットに流される映像作品の量はものすごく、そのなかで注目を得るのはとても難しいという話しがありました。
マンガについては LINEマンガなどが出て売れるものは売れている……と。バンドルされて電子雑誌として出ている場合突出したヒット作品があれば他の作家にもある程度お金が入るということもあるようです。
ちなみに古田さんがちょうど入手された祖父江慎さんデザインの夏目漱石『心』を嬉しそうに見せておられて「電子雑誌サミットでそれは良いのか……でもやっぱり手をかけられた紙の本て良いよね」という話しになっていたのは内緒の話しです。
さてこれをきっかけにどれだけの電子雑誌が立ち上がるのか。第二回が楽しみでもあるサミットでした。
私も聴講してきました。実は少し遅れてしまったために最初の方は聴けず、途中で入場して後ろでギネスを喇叭しつつ立ち見をしていたのですが、鷹野さんの『群雛』と「日本独立作家同盟」についてのプレゼンテーションがひと段落したところで前の方の席がふたつほど空き一転して最前列でお話しを聴くことが出来ました。何か普段の心がけが良かったのでしょうか。
内容については仲俣さんも含めた登壇者がそれぞれお書きになるのではないかと思います。よってここにレポートを書くのは蛇足に過ぎないのではないかという気もするのですが折角の最前列でしたので覚えている話題を幾つか書き記しておこうとおもいます。ちなみにこれといった写真は撮っておりませんでした。自分が飲んでいたギネスの瓶とパンディットの床の写真が手元にはあるのみです。
雑誌である意味
「あえて雑誌である意味とは何なのだろうか?」という問いがありました。これについて堀田さんから「(複数の作品が)バンドルされていてバラ売りはしない、ということだ」ということを言われました。執筆者から「バラ売りしないんですよね?」と確認されることもある、と。
これに対しウェブは個別に読めたり、取り上げたり、ブログ記事であればリンクを張ったりができます。
「電子雑誌とウェブとではどちらが良いのだろうか?」
という問いに発展します。鷹野さんはウェブ「も」良い、のではないかとと言われ古田さんはウェブ「が」良い、ということを言われました。古田さんの指摘は、EPUB はハイパーテキストを ZIP で固めたものだから実は内容には細かくリンクを指定することも可能、だけどまだそこまでできていない、「この雑誌のこの号のこの記事が良い」というような、ブログ記事のブックマークやキュレーションでは普通にできることが ebook ではまだできていない、という内容でした。
逆にウェブは個別に記事を取り上げることが容易だがどこまでがひとつなのか、という境界線が得てして曖昧でバンドルには向いていない、ということも言われました。なお紙の雑誌はバンドルされているわけですが実際に読むときにはぱらぱらとランダムに読んだりします。電子雑誌も「バンドルできてかつ個々の記事にもアクセスし易い」というところを狙うべきだというのがこの話題で見えたところでした。
アマゾンのランキング
執筆者への原稿料について revenue share、つまり売り上がったら利益を分けましょう、というカタチであったり基本のギャラ+売り上げであったり、さらには広告とのバーターであったりといういくつかの話しになったあとだったでしょうか。値付けの話になったときの鷹野さんの話しです。アマゾンのランキングは単位期間中の売り上げ「点数」であって売り上げ「金額」ではない、ということに気づかずに群雛の値付けを進めたため、遠慮のない値段にしてしまった……という話しがありました。当日トルタルへのライバルという煽り方がしきりとされたのですがそれがひとつのオチとなっていました。
これから「来る」コミュニティ
これは私が手を挙げて質問させていただいた話題でした。このブログでは Air もトルタルも群雛も書かせていただいたことがあるもので「こんなやつが書いておりました」というご挨拶の意味でも何かしら発言はしたいと思っていたので質問には手を挙げさせていただきました。「雑誌というのは得てしてコミュニティから生まれてくる、という側面があるとおもいます。これから電子雑誌としてこのコミュニティから出たら来るんじゃないか、というのはどんな分野があると思われますか?」
という質問をさせていただいたのでした。
古田さんからは「音楽じゃないでしょうか」という話がありました。CD店などから出されている雑誌や冊子はあるが基本画像とテキストで構成されていて読みつつ即音が聴ける、というものはまだないのではないか、と。ウェブであればナタリーのようなサイトがあるわけですが、バンドルされた電子雑誌でも実現し得ます。
鷹野さんからは一時的に盛り上がるコミュニティというのが確かにある、という話しで、例として Google がリリースしているゲーム「Ingress」が挙げられました。Ingress は私もプレイしていますが GPS を利用した「陣取りゲーム」といえるゲームで、敵味方や活動地域でコミュニティが自然とできるゲームです。実際には ingress においては Google+ などでクローズされたウェブサイトであったり普通のウェブサイトで情報発信されていたりするので「ウェブの方がフィットするのかもしれないけれど」という指摘もありつつ、でした。ただこれから盛り上がるコミュニティを見つけられれば電子雑誌を打ち出してそのコミュニティには認知される……ということが起こせるかもしれません。
この質問からの流れではなかったかとおもいますが堀田さんから Air の初期の巻で桜坂洋さんによる『デビルマン』の再小説化に触れて「デビルマンだったら何でも買う、という方々が一定数おられるのでデビルマンを続けていたらもっと部数は行ってるはず」という話しもありました。デビルマンは当然小説化の承認などが必要になるものですが、これもコミュニティという視点では示唆的でした。
ライバルの存在
コミュニティに続いて仲俣さんからあったのが「ライバルの存在が重要」という話題の提起でした。例えば The Beatles は、例えば One Direction のようにオーディションで全英から選ばれた若者ではなく、近所に住んでいた若者がバンドを組んで結果的にあそこまで大きくなりました。
例えば硯友社は東京大学予備門の文学同好会の尾崎紅葉や山田美妙が手作りした回覧雑誌からスタートしました。平塚らいてうの青鞜社しかり。
最初からレベルの高いところで認められる、というカタチも勿論あるのですが身近にライバルがいて切磋琢磨して結果として大きな存在になる、ということが雑誌というものでも実現し得るんじゃないか。「当方ボーカル、各楽器できるひと求む」というバンドメンバー募集のように「自分はココしかできないけどまず始めるぜ」という身軽さでやっていいんだ、というアジテートは古田さんや仲俣さんから繰り返し出されたところでした。
掲載順の決め方
「台割はどうされてますか」という質問がありました。どのページにどのコンテンツをおくかという設計を指す用語かとおもいますが、掲載順をの決め方ということで話しがされました。「編集者として直感で決める」というのが古田さんと堀田さん。
一方で「表紙のイラストも内容の記事も全て入稿順」と鷹野さんが言われるのでその編集不介入さの徹底ぶりから場内爆笑となりました。古田さんがツっこむツっこむ……
しかしルールをきちんと決めて運用する、というのが結果的に鷹野さんの個性が出ているといえるのではないかという話しになりました。現在は入稿開始日時も決まっていて、早ければ15分で締め切られてしまうこともあるのだということでした。
映像や漫画についての状況
堀田さんから逆に聴講者への質問で、アニメーションなどの映像やマンガについてはどうですか、という質問が投げかけられました。映像に関しては実写はともかく、アニメーションは作成に手間と時間がかかる。しかしネットに流される映像作品の量はものすごく、そのなかで注目を得るのはとても難しいという話しがありました。
マンガについては LINEマンガなどが出て売れるものは売れている……と。バンドルされて電子雑誌として出ている場合突出したヒット作品があれば他の作家にもある程度お金が入るということもあるようです。
日本独立作家同盟の今後の展開
鷹野さんから来年どうしていくか、というプレゼンテーションが最後にありました。公式に日本独立作家同盟としてリリースがあるでしょうからそれを待ちたいですが、楽しみです。古田さんも同盟参加者ですので、トルタルと日本独立作家同盟と連携していくということもあるかもしれません。堀田純司さんからのご案内
堀田さん、かなり早いピッチでお酒を召され壇上からお代わりアピールをされるたびに場内の笑いを誘っておられました。それでいて的確に話題を拡げておられました。ご自分の近著については遠慮して最後に紹介を回されていました。古田靖さんからのご案内
古田さんも近著を紹介されていました。盛岡のさわや書店さんが選ぶ2014年の文庫ベスト1に選出されるなど長く読まれる本になりつつあり本です。ちなみに古田さんがちょうど入手された祖父江慎さんデザインの夏目漱石『心』を嬉しそうに見せておられて「電子雑誌サミットでそれは良いのか……でもやっぱり手をかけられた紙の本て良いよね」という話しになっていたのは内緒の話しです。
さてこれをきっかけにどれだけの電子雑誌が立ち上がるのか。第二回が楽しみでもあるサミットでした。
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