『電子雑誌トルタル6号』

2015年7月18日土曜日

 電子雑誌トルタルの最新号が出ました。今号にも拙稿の掲載があります。

 編集長古田靖さんがランディング・ページを note に作られており、各ページの案内も書かれています。




 今号の巻頭はマキセ ヒロシさんの『アリアリとキンドルくん』紙芝居実演映像付きと、木村伊兵衛賞を獲得された川島小鳥さんの写真集『明星』の製本を手がけた篠原紙工さんを取材した『「明星」のすごい造本を手がけた人に聞いてみた―篠原慶丞さんインタビュー』。

巻頭特集でこのような好奇心をそそるようなページが組めるのも「トルタル」の強みです。出版物の売り上げについては継続して下がり続けている状況です。参考までに直近の小田光雄さんの『出版状況クロニクル』へのリンクを掲示しておきます。




 しかし「本」について好きなひとはそれなりにいて、その好奇心は本の内容だけでなく工作物としての本であったり、作成過程の校閲・校正や編集であったり、様々な訪問に対してきっと向いています。この特集はクラフトとしての本というものに焦点をあてていてこれだけでも読む価値があるものになっています。

 ……ちなみに「工作物としての本」という話しになると波野發作さんの『置読(おいとく)入門』がその辺りに触れているかと思います。「文化インテリアとしての本」について真顔で書かれているのですが
読まない本を本棚に並べること。私は、それを「置読おいとく」と名付けることに成功した。
というくだりを読むに至ってとてつもない敗北感を感じました。この感性への嫉妬しかありません。本への新たなアプローチが示されております。

ebook を読んでもらうために

ところで本を読んでもらうためには広告費などは持ち得ないプロジェクトで作られている場合、自ら宣伝して知ってもらおうと工夫します。この記事自体も、トルタルのためにそうしていますね。

 今回例えば、前号が出て以降に私が参加したコミュニティで「読んでみて」と流したところすぐに何名か読んでくださり、感想をいただくことができました。

 一方でこんなことも。Facebook のポストをみて読もうとして下さったのですがどうもうまくいかない、紙で出たら是非読ませていただきますとコメントをいただくという一幕がありました。読もうとして下さったのは田中良平さん。かつて「マチともの語り」という文芸サイトに参加していた時に知己を得た方でこんな著作があります。


天津今昔招待席

 田中さんはコンピュータなどの操作にそんなに詳しい方ではありません。「emagazine の epub データを Dropbox から取得してスマートフォンや PC で読む」という操作のハードルは少し高いのです。一方で前述のコミュニティは仕事上 IT スキルが高いような方が多い構成だったのでこれ位の操作はなんでもないということになっていました。

 田中さんに読んでいただけないのは残念、と思った時に以前にも同じようなことがあったことを思い出しました。『猫間川をさがせ』を最初に ebook として出した時のことです。当時「目標100人に献本できるか」という試みをやりました。実際は50人もいかなかったのですがその中で近藤三城さんという方にも献本しようとしました。その時の話しです。

 近藤さんはセミナーの講師やビジネス指導などのプロフェッショナルですが特に「自己紹介」という切り口でスピーチや営業技術などについて説くにおいて高い技術を持たれている方です。


90秒自己紹介で顧客をゲットするコツ

 私は人前に立って話したりは割りと苦にならないのですがそれは生来のものではなくいくつかの学習や経験から得たもので、その重要な部分を近藤先生から教えていただく機会を持ったことに依っています。近藤先生も一時期私のことを気にかけて下さっていたので「こんなものが出来ました」と読んで欲しかったわけです。

 当時はまだボイジャー社が T-Time という ebook リーダーを出していてそれで読むという手順が必要でした。端末も PC のみ。決して PC に詳しくはない方にインストールして開いて……ということをしていただくのは難しかったようで結局その時には読んでいただけませんでした。

 その時から比べれば端末の種類も増え、本を入手して開いていただくまでのハードルは格段に下がりました。それでもまだ同じような場面に出会うのだな、と思いました。

 私が当ブログを始めたのには「いかに多くのひとに ebook という形で本に接してもらうか」という問いへの自分への答えのひとつでした。だからまだまだ書かなければいけないし、もしかしたら新しい何かを作らなければいけないのかもしれないと言えます。そんな思いを新たにしました。