Kindleアーカイブの私的お薦め

2015年10月26日月曜日

 昨日から自分のまわりでは話題になっているのですが、 Kindle Store がオープン3周年でセールをされています。「人気タイトル50%OFF以上」と謳っているのですがそのなかでも Kindleアーカイブが期間限定無料となっているというものです。

 Kindleアーカイブは始まった時にもちょっと興味をもって何冊か「購入」していました。その時は岩崎灌園の『本草図譜』とか、絵が綺麗だという理由で。国立国会図書館所蔵の本で著作権の保護期間満了を確認できたものをウェブ公開されているものを Kindle Store のラインナップに加えているというものです。以下が Kindle アーカイブの冒頭の説明です。

国立国会図書館(NDL)が所蔵し近代デジタルライブラリーとしてWeb公開されているパブリックドメイン(画像データ)の図書、雑誌をKindle版として販売。葛飾北斎、喜多川歌麿、安藤広重などの浮世絵作品や夏目漱石や三島由紀夫、芥川龍之介、太宰治などの文学作品など明治・大正・昭和初期と、当時の風俗・文化を伝える、人々に愛されていた書物を、Kindle本ならではの機能や読みやすさでお楽しみください。
Amazon.co.jp: Kindleアーカイブ: Kindleストア より

 いろいろ見てついクリックしてしまっています。あとで読まないようなものまでつい……取り急ぎ iMac の Kindle で開いています。容量がそれなりにあるので iPhone5 はともかくあまり容量が大きくない我が家の iPad では無邪気に開けません。文化財的な古文書などは崩字や漢文が解読が難しいので明治期以降のものか、絵図のものがやはり良いようです。自分的にお薦めだなとおもったものをいくつかあげます。



三愚集


夏目漱石真蹟俳稿

 漱石はかなり入っています。著作権保護期間が過ぎた作家は鴎外にせよ芥川にせよ太宰いせよ入っていますが、夏目漱石自筆の俳 稿が入っています。毛筆なので読むのはちょっと骨ですが。



伊勢物語 新訳絵入

 吉井勇による伊勢物語の現代語訳、挿絵が武久夢二。吉井勇は数多い歌集のうち『 黒髪集』がアーカイブされているようでやはりラインナップされています。最近感じるのですが詩集や歌集、句集といったものは絶版になってあんなに人口に膾炙したようなものでも入手して読めないことに気づくことがよくあります。青空文庫の価値はそういうものにもすぐに手を伸ばせることがあるのですがこういう画像データにも同様のことがもっとできるだろうと思います。ざっと見た中でも斎藤茂吉、北原白秋、萩原朔太郎、室生犀星、宮沢賢治といったところの作品はアーカイブの中で見つけられました。



あづまにしきゑ 楳嶺花鳥画譜

 幸野楳嶺こうのばいれいによる画集です。このあとに出てくる月岡芳年や小林清親とほぼ同じ年代の方ですが浮世絵ではなく日本画家として認識されている方で、かつ教育者としても優れた方だったそうです。円山派から入って四条派にも学んだというのが素人目にも感じられる緻密で美しい絵。



あづまにしきゑ 芳年略画

 幸野楳嶺の画集と同じく同じ「あずまにしきゑ」を冠された、月岡芳年の錦絵集。子供の頃にどの本だったかで見た、円山応挙の幽霊絵から本当に幽霊が飛び出てくる絵は芳年の筆によるものだったと気がつきました。大蘇芳年の名での本も含めて収録が多いですが、芳年は大蘇芳年名義のものも含めて多くアーカイブに入っていますが美人画が画一的にみえる一方でこういう自由に書いたものが圧倒的に面白いです。



武蔵百景

 表紙は地味だが小林清親の筆による浮世絵による風景画集です。小林清親は月岡芳年と並び称される明治期の浮世絵画家。



川瀬巴水版画集 1

 月岡芳年や小林清親より三十年ほどあとに現れるのが川瀬巴水や高橋松亭です。川瀬巴水が一冊アーカイブに入っていました。彼は馬込に住んだことがあるひとで非常に親しみを持っていますが海外では北斎などと並んで人気がある版画家と聞いています。色のグラデーションの美しさが楽しめる画質で読めます。



猿若錦繪 [1]

 逆に江戸に遡ったら……とみたら河鍋暁斎は一冊だけ、歌川国芳はいくらか入っていました。役者絵のシリーズがあってさすがに絢爛です。



士農工商

 で、葛飾北斎。実は今週目白の永青文庫で開催されている春画展を見てきたのですが北斎と歌麿はやはり格上な感じを持ちました。見ていて普通にむらむらする、というかもしかしたら写真やビデオよりも欲情を掻き立てられるかもしれない。アーカイブにそちらの作品は残念ながらないようですがあれこれ見ていて、これが一番面白いかもしれないとおもいました。いろいろな職業のひとの姿を切り取って書いたものです。あと『 万職図考』というデザイン集も面白い。


 あと宮武外骨なんかを読みましたがずばずばというけど時々明らかに間違ったことを書いていたり女性蔑視が過ぎる部分があってどうも。石原莞爾も少し読んで正論書いているけど実際に起こったことはなぁ……とか思ったりしていました。

 またかつて取り上げたことがある酒井潔の『エロエロ草子』は Kindle アーカイブに入っている分ではなくリフロー版として作られた、200円する方が自分としてはお薦めです。

e-book reviews Japan: 『エロエロ草紙』 酒井潔 (Kindle / AHWIN ePub Team )

 このキャンペーン、「※Amazon.co.jp は本キャンペーンを予告なく変更または終了する権利を保有します」と書いてあるのですが具体的な期間が書かれている場所が見つけられず明日終わるのか一ヶ月ぐらい続くのかよく分からないです。