何をぼうっとしていたんだ、という話しなのですがちょっとよそを向いている間にインディーズの作家で面白い作品を ebook で出しているひとが格段に増えているようだということにここ数ヶ月で気がつくようになりました。別に急に増えたのではなくて Kindle Direct Publishing など ebook の出版サービスが2012年、13年あたりから出てきて着々と取り組んできた書き手たちがいてそれが閾値を超えて世に飛びだし始めたというところでしょうか。
ヘリベマルヲさんの作品に興味を持ったのはろすさんとのフェイスブックだかツィッターだかでのやりとりだったのですが改めて探すと出てきません。彼のサイトの日記だかの書き様が面白かったのですが今読み返すとどうもその部分が見つけられません。
人格OverDrive
まぁ、それは措いておいて。
現時点で Kindle Store では彼の作品は無料公開されていてそれを何冊か読んでいます。先に書いてしまうと今回取り上げる『シュウ君と悪夢の怪物』、あと『Pの刺激』と『ガラスの泡』はカドカワの Bookwalker で値段がついて出ているので買い直しました。ただただ楽しめた作品だったのでその意思を表したいとおもったものです。『黒い渦』も面白かったけど自分がついていけなかったところがあったのでこのたびはこの三冊を。
『シュウ君と悪夢の怪物』は「児童文学」と紹介されています。児童文学? 那須正幹さんの『ズッコケ三人組』や佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』、原ゆたかさんの『かいけつゾロリ』みたいな? たぶん、その通り。この本が紙の本として出版されて近所の図書館の児童書コーナーに置いてあるとしたらなかなか良い感じです。主人公は母親がとてもポップな理由で家を出てしまっている父子家庭の小学生。ただとても大人びた考えで物語を語っていくので大人がなんとか子供の視点で書こうとしている……と感じられなくもないかな。
だからなのか、自分はこれを児童文学というよりはSFだという意識で読んでいました。
ヘリベさんの不快なものに触れた時の描写、饐えた臭いだとか臓物が飛び散ったような場面の書き様は念入りで『シュウ君と悪夢の怪物』にもそのような場面は出てきます。
どちらかというと他の作品の方がより強くおどろおどろしい描写出てくるのですが例えば『Pの刺激』は主人公のキャラクター──とても陰惨な過去をもっているけどそれを表に出さない、容姿は格好良くはなくてどこか抜けてて風俗店好きだけどそれなりに女性にモテる──でうまくバランスが取れています。『Pの刺激』を読んでいる途中に(これはシリーズ化されて二作目以降があって欲しいな)と思っていたので『ガラスの泡』がいわゆる続編だとわかった時はちょっと喜んで読み始めたということがありました。『ガラスの泡』にも陰鬱な悪夢の描写、さらには現実における辛い結末の描写があって決して軽い内容ではないですが主人公が女の子にフられたのを引きずっているとか自分の秘密をあっさり知られてしまって呆然とするとかそういう場面が読み手の緊張を解いてくれるところがありました。
『シュウ君と悪夢の怪物』に出てくる怪物の描写もそれなりにエグい。子供が読んだらどう感じるんだろう、というのはちょっと興味があります。気持ち悪く感じてしまうひともいるでしょうし、むしろ全然許容範囲じゃん、という子供も居るでしょう。でもロアルド・ダールの『チョコレート工場』に出てくるような気持ち悪い表現が許容されるならこの怪物だって小学生が出会っても良いものだろうと思います。むしろ宇宙警察が全力で分析して準備した格好がちょっとズレてるとか、そういうところなんか子供にはウケそう。
ということは映像化もあって良いのか……『ガンバの大冒険』のリメイクで大コケするくらいだったらインディーズ作品のなかからこんな秀作を取り上げる方がよほどあり得る冒険だと思うのですが如何でしょうか。しかもこの登場人物たち、続編を作れる余地が残されているぞ。
最後に書かずもがなのことですが、『シュウ君と悪夢の怪物』は『ガラスの泡』のパラレルワールドのようなお話しでもあります。『ガラスの泡』の結末には絶望感があって、そのなかに一筋の光明があるという作品だけれども『シュウ君と悪夢の怪物』の最後には安らぎがある。自分は村上春樹さんの作品のなかで『ダンス・ダンス・ダンス』が割りと好きなのですがそれは『風の歌の聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』と較べて『ダンス・ダンス・ダンス』の結末には安らぎが感じられる。「ユミヨシさん、朝だ」ですね。そういう指向が自分にはあるのでしょう。同じ理由で『シュウ君と悪夢の怪物』が好きなんだろうと思います。ノベルは家に帰る。父親と新しい母親?の待つ家をめざして。そこが好きになったところです。
シュウ君と悪夢の怪物
Pの刺激 - Punk is UnknowN Kicks -
ガラスの泡
黒い渦 - bebop girl’s microgroove -
ヘリベマルヲさんの作品に興味を持ったのはろすさんとのフェイスブックだかツィッターだかでのやりとりだったのですが改めて探すと出てきません。彼のサイトの日記だかの書き様が面白かったのですが今読み返すとどうもその部分が見つけられません。
人格OverDrive
まぁ、それは措いておいて。
現時点で Kindle Store では彼の作品は無料公開されていてそれを何冊か読んでいます。先に書いてしまうと今回取り上げる『シュウ君と悪夢の怪物』、あと『Pの刺激』と『ガラスの泡』はカドカワの Bookwalker で値段がついて出ているので買い直しました。ただただ楽しめた作品だったのでその意思を表したいとおもったものです。『黒い渦』も面白かったけど自分がついていけなかったところがあったのでこのたびはこの三冊を。
『シュウ君と悪夢の怪物』は「児童文学」と紹介されています。児童文学? 那須正幹さんの『ズッコケ三人組』や佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』、原ゆたかさんの『かいけつゾロリ』みたいな? たぶん、その通り。この本が紙の本として出版されて近所の図書館の児童書コーナーに置いてあるとしたらなかなか良い感じです。主人公は母親がとてもポップな理由で家を出てしまっている父子家庭の小学生。ただとても大人びた考えで物語を語っていくので大人がなんとか子供の視点で書こうとしている……と感じられなくもないかな。
だからなのか、自分はこれを児童文学というよりはSFだという意識で読んでいました。
ヘリベさんの不快なものに触れた時の描写、饐えた臭いだとか臓物が飛び散ったような場面の書き様は念入りで『シュウ君と悪夢の怪物』にもそのような場面は出てきます。
どちらかというと他の作品の方がより強くおどろおどろしい描写出てくるのですが例えば『Pの刺激』は主人公のキャラクター──とても陰惨な過去をもっているけどそれを表に出さない、容姿は格好良くはなくてどこか抜けてて風俗店好きだけどそれなりに女性にモテる──でうまくバランスが取れています。『Pの刺激』を読んでいる途中に(これはシリーズ化されて二作目以降があって欲しいな)と思っていたので『ガラスの泡』がいわゆる続編だとわかった時はちょっと喜んで読み始めたということがありました。『ガラスの泡』にも陰鬱な悪夢の描写、さらには現実における辛い結末の描写があって決して軽い内容ではないですが主人公が女の子にフられたのを引きずっているとか自分の秘密をあっさり知られてしまって呆然とするとかそういう場面が読み手の緊張を解いてくれるところがありました。
『シュウ君と悪夢の怪物』に出てくる怪物の描写もそれなりにエグい。子供が読んだらどう感じるんだろう、というのはちょっと興味があります。気持ち悪く感じてしまうひともいるでしょうし、むしろ全然許容範囲じゃん、という子供も居るでしょう。でもロアルド・ダールの『チョコレート工場』に出てくるような気持ち悪い表現が許容されるならこの怪物だって小学生が出会っても良いものだろうと思います。むしろ宇宙警察が全力で分析して準備した格好がちょっとズレてるとか、そういうところなんか子供にはウケそう。
ということは映像化もあって良いのか……『ガンバの大冒険』のリメイクで大コケするくらいだったらインディーズ作品のなかからこんな秀作を取り上げる方がよほどあり得る冒険だと思うのですが如何でしょうか。しかもこの登場人物たち、続編を作れる余地が残されているぞ。
最後に書かずもがなのことですが、『シュウ君と悪夢の怪物』は『ガラスの泡』のパラレルワールドのようなお話しでもあります。『ガラスの泡』の結末には絶望感があって、そのなかに一筋の光明があるという作品だけれども『シュウ君と悪夢の怪物』の最後には安らぎがある。自分は村上春樹さんの作品のなかで『ダンス・ダンス・ダンス』が割りと好きなのですがそれは『風の歌の聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』と較べて『ダンス・ダンス・ダンス』の結末には安らぎが感じられる。「ユミヨシさん、朝だ」ですね。そういう指向が自分にはあるのでしょう。同じ理由で『シュウ君と悪夢の怪物』が好きなんだろうと思います。ノベルは家に帰る。父親と新しい母親?の待つ家をめざして。そこが好きになったところです。
シュウ君と悪夢の怪物
Pの刺激 - Punk is UnknowN Kicks -
ガラスの泡
黒い渦 - bebop girl’s microgroove -
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