【雑話】作家への還元について

2015年12月15日火曜日

 本を読む方からするとあまり関係ない話しかもしれませんが、もし本を買う時に普通に「購入する」という感覚よりも「この本の内容は良かったから著者に還元したい」というような思いが強くあったとしたら、どこで買うのが良いのかということが気になります。ebook はどこで買うかによって値段が違うだけでなく著者への印税にも違いがあるのです。この点同じ「本」だと言っても普通の商品のような流通が ebook にはあるわけです。

「book☆walker の印税率が良いからインディーズ作家の作品ならば book☆walker で買うのが良いかな」というポストを見かけたことがありました。book☆walker はカドカワグループの会社が運営する電子書籍配信サービスです。改めて調べたところそのものの情報ではないものの BCCKS には各ブックストアに配本した際の印税のまとめがありました。ちなみに BCCKS とは下記のようなサービス。

BCCKS(ブックス)は、誰でも無料で電子書籍や紙本をつくり、
公開し、販売することができるWebサービスです
電子書籍は主要外部ストアに配本し販売もできます
BCCKS / ブックス - BCCKSって? より

 あまりにわかりやすいので画像に直接リンクさせていただくのですが、BCCKS のサービス上で販売するのが一番印税の率が高く70%、次いで book☆walker と楽天kobo の50%。あとは軒並み35%で Kindle Store が25%になっています。


ストア配本の料率
BCCKSから配本できるストアと料率は? | BCCKS情報局 より、2015年11月時点


 前述のように ebook を買って読んだ時著者に賞賛の意図を伝える気持ちを持つことがあります。演劇や笑芸などで「料金は観客が決めて払う」というシステムをきくことがありますがそこまで自由ではなくても一定の払いやすい低い額の料金を払って読んでもらって、気に入ったら追加で「出来高払い」、といった課金システムが ebook においては実現可能な気がします。アマゾンのレビューで星をつける感覚の操作性で出来たらどうかと。

 ebook というものの特性についてよく考えるのですがマルチメディアというか、文字以外のコンテンツと組み合わせてのパッケージ化みたいなことが語られるのを目にすることがあってもいまいちピンと来ないのを感じます。それもあり得るんだろうけれども需要に合っていないんじゃないだろうか、ということだろうと考えています。自分が普段 ebook を使っていて感じるのは作家からすれば出版へのコストを下げ得るツールであるということ、読者からすれば本へのアクセスが早いツールであることなんじゃないかと。これは商品としての本について基盤を結構根本的に変えられるものであると表現できます。その基盤というのは商慣習や法の部分にまで及ぶもので、だったら再販制度が ebook に及ぶ前に良い事例をもっと作ってそちらを本流にしてしまったらどうか。

 こと商売について簡単じゃないな、とおもうのが「コミュニティを作って参加者から一定額会費を集める」というサービスで hopp というものがあるのですが2015年内を以ってサービス終了する旨の案内メールが先日届きました。ファンの輪を作れることが出来そうで、作家に限らずクリエイターには親和性が高そうにおもえるサービスでした。最初 Grow! というサービス名だったのが運営会社が変わってサービス名も変わっていたものでどうなのかな……と思っていたのですが思うように業績を延ばせなかったのでしょうか。私のような吝嗇からすると1回払うのは良くても毎月会費を払うとなるとちょっと二の足を踏むようなところがあって、もしかして私のような人の方が多かったのかな、とおもいます。一方であるプロジェクトに対して行うクラウドファウンディング、READYFOR のようなサービスは使われ続けているような印象を持っています。作家を囲むコミュニティと表現すると心地よく耳に響きますがこれはいわば「定常業務の運用」で期限の設定がなく維持していくことに労力やテクニックを必要とするものです。hopp がコミュニティメンバーの固定化を前提にして商売にしようとするのは実はハードルが高かったのかもしれません。加えて出版までのコストを下げられるツールが実用化されている、ということは作家が増えることにもなるわけでひとつのコミュニティを維持できるような作家が存在し得る余地というのはより無くなっているのではないかとおもいます。

 Twitter や Facebook などのソーシャル・ネットワーク・サービスが普及してやっと我々が気がつけたことのひとつに、緩やかなコミュニティというものも存在し得るんじゃないか、ということがあります。例えばファンページやハッシュタグなどでつながっている集まりです。そんな集まりでも維持に労力が全く要らない訳ではないでしょう。ただ参加も離脱もいちいち分かる訳ではなく割りと自由で、でも何かイベントがあるとわっと人が集まりやすくなっている。イベントというのは作家からすれば例えば本の出版や本を原作とした映画などの製作をイメージすれば良いでしょうか。一過性プロジェクト的な参加のしやすさでもって、それでいて緩やかなコミュニティをつくれる可能性はすでに複数のソーシャル・ネットワーク・サービスで提供されています。これにお金の流れを加えることに成功した例はとても少ないようにおもうのですが値付けさえ間違わなければすでにあるサービスの組み合わせでも出来るのではないかと思っています。読む方としては幾らで読めるのかをまず気にしてしまいがちですが作家への還元率も知っておいて良いのではないでしょうか。