2017年9月30日(土)、NPO法人日本独立作家同盟主催で様々な視点からデジタル読書の楽しみ方を紹介するライトニング・トーク大会を行いました。
10人が登壇したのですが、その内容をひとりづつ、テキストで紹介していきます。五番目の登壇者は『S−Fマガジン』元編集長 今岡清さんです。
今岡 という者ですが、電子本ということで。
考えてみると私は画面で原稿を、というか本、というか原稿を読むようになって何年ぐらい経つかなと思ったら、編集記者時代に、うちの奥さんの栗本薫 ※1 というひとは、1980 …何年だったかな? かなり昔からワープロ ※2 を使って原稿を書いて、それを私のところに送ってきて、それを私が読んで、それで出版社に送る、という生活をしていたもので、原稿をこう……画面でみるっていうのはすごく馴染んだ作業で、十数年……二十年くらいかな、やっていました。
昔、ボイジャー ※3 さんで「エキスパンドブック」※4 というのが出来た時には、それで見ると「あ、これはワープロに比べてなんて読みやすいんだろう」と思ってすっかり感動して、早速自分でもそういうもの(電子書籍)をつくってみて、子供向けの童話みたいなのをこさえて子供とふたりできゃっきゃと喜んでいました。そんなことをしながら、でもやっぱり広まってはいかないな、ずーっとそれが読んでいるひとがあんまりいないまま、商売になるものではないかな、と思っていました。
割りと最近になってきて、電子本というのがマーケットとして動き始めているらしいというのを聞いてびっくりして。
実は私は何年か前から乱視で老眼で、おまけにそれに斜視が加わって、字を読むのがものすごく辛くなってきて。丁度その頃仏教にものすごく凝ってて、漢文みたいな漢字だらけの分厚い本を山のように買い込んで読んでたらそれが全部読めなくなっちゃったんで頭にきてまとめて古本屋に売っ払っちゃうというくらい本を読めなくなったの堪えていました。
そうして(いるところへ)電子本というのが出来た。これは読めちゃうじゃないか。昔に比べると三、四十分読んでいると目が痛くなってきて休憩ということにはなっちゃうんですが、それでも読めちゃうじゃないかというのが分かって ※5 。もう私は機械で本を読むという方法が無かったらまず読書はしなくなっちゃうかな。そう考えてみると私よりも年上のじいさんばあさんこそ電子本というものに馴染んで欲しいと思う次第です。
私の話って構成というものがほぼないから、私の話をまとまったものにしようってのは大変な作業じゃないかと常々思うんですが、その大変な作業をしてくださって、この前こちら(日本独立作家同盟主催の講演会)でやった講演をこんな本にして下さって、これは本当に素晴らしいなとおもって。これはよろしければその仕事ぶりに感動していただきたくて是非読んでいただきたいとおもいます。
実はね、全く違う話をしようとおもってたんですけど(会場笑)。まだ多少時間があるので、何の話をしたかったかっていうと電子本のおかげで絶版がなくなって、これまでは書店の店頭が勝負で、本は消えていっちゃって、再出荷は一応形としてはあるけどほとんど動かないで、もう本というのはとにかく見つけたとこで買わないとダメみたいなそういう世界があったんだけれど、(電子本は)逆にいつでもちゃんと手に入る。
それは便利なことなんだけれども、今度自分が電子本を出す方の立場になってみると、バックリストの海の中にぽちょんとこう、落っことすみたいな感じで、そこの中でどうやってユーザーにつながっていくようにするか、これはね、紙の本よりもよっぽど大変なのかな、という気がしてきたということについて色々話そうかと思ってたんですが、まぁこんなところで。
ありがとうございました。
※1栗本薫 …… 1953年2月13日〜2009年5月26日、小説家、評論家。著作に『グイン・サーガ』シリーズ、『魔界水滸伝』シリーズ、『弦の聖域』など伊集院大介シリーズ、『ぼくらの時代』などぼくらのシリーズなど。SF、ミステリー、ファンタジーなど幅広いジャンルで作品を発表した。中島梓名義で評論やエッセイもある。
※2 ワードプロセッサ専用機のこと
※3 株式会社ボイジャー。ウェブ画面で電子書籍を読むことができるサービス「BinB Store」、出版システム「Romancer」など出版についてのサービスを提供する。
※4 エキスパンドブック …… ボイジャー社が 1993年に開発した電子出版物用のファイル形式。エキスパンドブック用ブラウザで実際の読書に近い見た目、操作を実現した。2000年までに開発を停止、後継のドットブック形式に、更に「BinB Store」に移行している。
※5 アマゾンのKindle 、楽天の kobo など主な電子書籍アプリ、専用端末は文字の大きさや画面の輝度を変える機能を持っており、文字を大きくすることで読みやすくできる
登壇者
今岡 清(いまおか きよし)
編集者、株式会社天狼プロダクション代表取締役。『S−Fマガジン」(早川書房)の編集長として星新一、小松左京、筒井康隆らの作品を手掛け、神林長平、大原まり子らの新人を育てた。作家の栗本薫は妻。栗本薫の遺作『グイン・サーガ』の続編プロジェクトを監修している。
10人が登壇したのですが、その内容をひとりづつ、テキストで紹介していきます。五番目の登壇者は『S−Fマガジン』元編集長 今岡清さんです。
考えてみると私は画面で原稿を、というか本、というか原稿を読むようになって何年ぐらい経つかなと思ったら、編集記者時代に、うちの奥さんの
昔、ボイジャー ※3 さんで「エキスパンドブック」※4 というのが出来た時には、それで見ると「あ、これはワープロに比べてなんて読みやすいんだろう」と思ってすっかり感動して、早速自分でもそういうもの(電子書籍)をつくってみて、子供向けの童話みたいなのをこさえて子供とふたりできゃっきゃと喜んでいました。そんなことをしながら、でもやっぱり広まってはいかないな、ずーっとそれが読んでいるひとがあんまりいないまま、商売になるものではないかな、と思っていました。
割りと最近になってきて、電子本というのがマーケットとして動き始めているらしいというのを聞いてびっくりして。
実は私は何年か前から乱視で老眼で、おまけにそれに斜視が加わって、字を読むのがものすごく辛くなってきて。丁度その頃仏教にものすごく凝ってて、漢文みたいな漢字だらけの分厚い本を山のように買い込んで読んでたらそれが全部読めなくなっちゃったんで頭にきてまとめて古本屋に売っ払っちゃうというくらい本を読めなくなったの堪えていました。
そうして(いるところへ)電子本というのが出来た。これは読めちゃうじゃないか。昔に比べると三、四十分読んでいると目が痛くなってきて休憩ということにはなっちゃうんですが、それでも読めちゃうじゃないかというのが分かって ※5 。もう私は機械で本を読むという方法が無かったらまず読書はしなくなっちゃうかな。そう考えてみると私よりも年上のじいさんばあさんこそ電子本というものに馴染んで欲しいと思う次第です。
私の話って構成というものがほぼないから、私の話をまとまったものにしようってのは大変な作業じゃないかと常々思うんですが、その大変な作業をしてくださって、この前こちら(日本独立作家同盟主催の講演会)でやった講演をこんな本にして下さって、これは本当に素晴らしいなとおもって。これはよろしければその仕事ぶりに感動していただきたくて是非読んでいただきたいとおもいます。
『それでは小説にならない ー元編集長が語る創作の作法』、電子書籍もあり
実はね、全く違う話をしようとおもってたんですけど(会場笑)。まだ多少時間があるので、何の話をしたかったかっていうと電子本のおかげで絶版がなくなって、これまでは書店の店頭が勝負で、本は消えていっちゃって、再出荷は一応形としてはあるけどほとんど動かないで、もう本というのはとにかく見つけたとこで買わないとダメみたいなそういう世界があったんだけれど、(電子本は)逆にいつでもちゃんと手に入る。
それは便利なことなんだけれども、今度自分が電子本を出す方の立場になってみると、バックリストの海の中にぽちょんとこう、落っことすみたいな感じで、そこの中でどうやってユーザーにつながっていくようにするか、これはね、紙の本よりもよっぽど大変なのかな、という気がしてきたということについて色々話そうかと思ってたんですが、まぁこんなところで。
ありがとうございました。
※1
※2 ワードプロセッサ専用機のこと
※3 株式会社ボイジャー。ウェブ画面で電子書籍を読むことができるサービス「BinB Store」、出版システム「Romancer」など出版についてのサービスを提供する。
※4 エキスパンドブック …… ボイジャー社が 1993年に開発した電子出版物用のファイル形式。エキスパンドブック用ブラウザで実際の読書に近い見た目、操作を実現した。2000年までに開発を停止、後継のドットブック形式に、更に「BinB Store」に移行している。
※5 アマゾンの
登壇者
今岡 清(いまおか きよし)
編集者、株式会社天狼プロダクション代表取締役。『S−Fマガジン」(早川書房)の編集長として星新一、小松左京、筒井康隆らの作品を手掛け、神林長平、大原まり子らの新人を育てた。作家の栗本薫は妻。栗本薫の遺作『グイン・サーガ』の続編プロジェクトを監修している。
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