「あの日の文庫本を取り戻せてたーのしー」椋康雄 第1回 デジタル読書ってこんなに楽しい! ライトニングトーク大会

2017年10月10日火曜日

 2017年9月30日(土)、NPO法人日本独立作家同盟主催で様々な視点からデジタル読書の楽しみ方を紹介するライトニング・トーク大会を行いました。

 10人が登壇したのですが、その内容をひとりづつ、テキストで紹介していきます。四番目の登壇者は当ブログの執筆者、椋康雄です。



 椋康雄むくのきやすおと申します。

 今日はですね、好きな作家の本というのはずっと取っておきたいものなんですけど失くしてしまった、という、私のような間抜けな読者のためにも電子書籍はある、という話をしたいとおもいます。

 突然でございますけど野村胡堂のむらこどう ※1 さんという作家を皆さんはご存知でしょうか?

 若い人は意外と知らないかもしれないですが、これです。(大川橋蔵さん主演のテレビ時代劇『銭形平次』のオープニングの画像を示して)原作 野村胡堂のむらこどう、ということでですね、『銭形平次捕物控』という捕物帳小説の作家さんでいらっしゃいます。By フジテレビ、東映、ということで、最近はあまり時代劇というテレビ番組もなくてですね、「銭形平次」といってもパチスロのCMでしか見ない、ということになっている気がしないでもないんですけど、非常に好きな作家さんです。

 私がですね、野村胡堂のむらこどうさんに興味を持ったのは時代劇番組であったり、捕物帳小説であったり、あるいは彼は「あらえびす」という別のペンネームでですね、クラッシックレコードの批評でも著名な人なんですけれども、そういったとこではなくてですね、テレビ番組であるとき彼のことを取り上げた番組を見たんですね。多分 NHK だったよなと思ってこのたび探してみたんですが、映像まではみつからなかったんですが番組名は探し当てられました。1982年8月11日、私多分中学生です。夏休みにですね、実家に戻っておりましてそこで見たというのを強烈に覚えているんですけど「ふるさとにっぽん(7)いわて人物評伝 野村胡堂」というのがありましてこれを見て興味を持ったということなんですね。

 興味を持った、ということで読んでみよう、となるんですけども、私が『銭形平次捕物控』をいきなり読むかというとそうではございませんで、まぁ最終的には読むんですけど、あるいはクラッシックレコードについて書かれた『名曲決定盤』でもなくてですね、先ほどの作品(番組)が彼の書いた随筆をもとに取材してつくってらしたんですね。その随筆に非常に興味を持ちましてそれを読むわけです。つまりこういう表紙のものです。


 今すでにアマゾンでも書影がございませんでして ※2 いろいろ探しました結果京都の恵文社さんの(オンラインショップの)ところに載ってました。まさにこの表紙の中公文庫の『胡堂百話こどうひゃくわ』というのがありまして、元々銭形平次で『銭形百話』※3 という百話集めたものがあって、それに倣って随筆が百話近くあったのをまとめられたのが『胡堂百話』というものです。私、何だったら小説より随筆を読んでいる方が心が落ち着くことがあるくらいで、非常にこれを愛読しておりました。

 これを実は私、失くすんですね。私奈良で育ったんですけれど、奈良の実家がもう引き払われて存在しません。ひとに(売り)渡すので壊す時に「この本だけは取っといてほしい」って言ったんですが見つからなかったそうでおそらく私が失くしたんだとおもいます。

 野村胡堂のむらこどうさんは1963年に肺炎でお亡くなりになられてます。 享年八十歳でらしたんですが、2013年に没後五十年を迎えてらっしゃるということで、青空文庫 ※4 にいつのまにか入っておりました。(青空文庫の野村胡堂作品のページを表示しながら)このようなかたちでずらっと、入っております。これは青空文庫でも読めるんですけどアマゾンでお金を出して買いました ※5。安いものでしたけれども。これ唯一の問題というのが表紙がですね、あまりよろしくないです。


 こういう表紙なんですね。(会場笑)

 もうちょっと力を入れてほしかったところで、表紙が私が知っている『胡堂百話こどうひゃくわ』ではないですけれど中身は間違いなく、昔読んだものだったので楽しく今読んでいる、というところでございます。

 そういった、過去に失くしたものも読める可能性がある、ということのご紹介でございました。以上でございます。


※1 野村胡堂のむらこどう …… 1882年10月15日〜1963年4月14日、新聞記者、小説家、音楽評論家。岩手県出身、報知社で新聞記者として活動、また「あらえびす」の筆名でレコード評論を執筆。1931年に「文藝春秋オール讀物號」創刊号に『銭形平次捕物控』第一作である『金色の処女』を発表し以後多くの作品を執筆した。
※2 ライトニングトーク後に再確認したところ、書影があがっていました。また中央公論新社のサイトにも情報があります。→「胡堂百話|文庫|中央公論新社」 絶版であると勘違いしていたかもしれません。
※3 正しくは『銭形平次捕物百話』
※4 青空文庫 …… 著作権消滅後の作品や著者が許諾した作品をテキスト及び XHTML 形式で公開しているインターネット上の電子図書館サービス。
※5 青空文庫のデータをもとに製本した電子書籍を購入した、の意。著作権消滅後であるため青空文庫のデータを使用した商品化も可能となります。

登壇者
椋 康雄(むくのき やすお)
システム定常運用担当者として勤務しつつ、著書に『猫間川をさがせ』、『内川逍遥』(電子雑誌トルタル)など。このライトニングトークのテキストを掲載しているブログ「e-book reviews Japan」の執筆者です。