『天体観測Always1』 荻野義隆 ( Kindle )

2013年4月7日日曜日

 ブログのようにインターネットに接続しさえすれば読めるものであっても、読んだあとに思わずいくばくかのお金を賛辞の代わりにと置いて行きたくなるものがあります。私ははてなというサービスを普段使っているので、はてなブックマークであったり、はてなスターを付けたりというのはそういう気持ちの現われである時がしばしばあります。はてなスターは特に、そうですね。

 ブックマークしたり自分のブログに引用したりする時にも単にその文章や写真、映像を無償で消費するのではなく、敬意としての対価をお渡しできたら良いのではないかとおもいます。

 近いサービスはあるでしょう。Gumroad で出すというのも手でしょうし、e-book では例えば以前に取り上げた Paberish もほぼブログに近い内容が小さい額でも並べられていました。ただ、それほど成功例が出せているかというと聞いたことがない。小額でも払わなければ見れないですし、そうなるとわざわざ賛意を示すまで至らないという事になりましょうか。

 ただ、アマゾンで $1 相当の額で買えるというのは、ちょっと試したくなります。基盤をつくり上げた故に得られた力でしょうか。
著者が前書きで「SNS の日記やブログ等の記事をまとめたエッセイ」で息抜きに読んでもらえたら、と書いていますが、エッセイとして佳作です。特に最初の「感謝は涙の味」は好き。多分、Facebook で読むことがあったら "Like" をクリックしまうだろうし、ブログにはてなスターが設置されていたらグリーンスターを押すのだろうと思います。そういえば Facebook がいっとき、ポストする際に有償で adwards するか? みたいな選択肢を出していたことがありましたがもう引っ込めたでしょうか。あれはちょっと違うと思うのです。世に問う方が先に出すのではなく、読む方が「ここまでなら出せます」という賛意枠を Facebook なり twitter なりの中に預けることが出来て、そこから幾許かお渡しするような、「宛先の曖昧なマイクロファウンディング」が存在したらどうだろうか。

 アマゾンが99円で e-book を販売する手段を提供している、というのはひとつの可能性だと思います。そのことで荻野さんの書いたものに行き会いました。また、Kindle にあげるにあたりそれなりの編集も経ているのではないかと感じます。編集の過程におけるテンションは作品の内容を引き上げているのではないかと思います。

 ただアマゾンが作り出せないお金の流れがまだあるのではないだろうか、というようなことをこのたび支払った99円の向こうに見たりしていました。あと、Kindle は相変わらずページレイアウトやフォントにちょっと難を抱えたままですね。基盤をつくりあげ、使わざるを得ないような状況を成したからこそできるレベルのズボラだと思います。

 話が逸れていきますが、別の観点として、e-book と実際の紙の書籍を両方ラインナップし、どちらかを購入していればどちらも手にすることができるというようなサービスに一番近いところにいるのもアマゾンなのでしょう。出版社としては確か O'Reilly はそんなことをしていたのではなかったでしょうか。もしかしたら著者や出版社がその気になれば今すぐにでも可能なのかもしれませんが、このサービスを提供するものは現在のアマゾンとは異なる部分のシェアを獲得することになるのではないかと思ったりします。

 逸れまくった挙句になんですが、あと、「お母さんと娘」も好きです。読みながら思わず頷いてしまいました。